LESSON 3-1 来談者中心的カウンセリング

前までの章ではキャリアカウンセリングを行なうにあたってベースとなる理論を紹介しました。このレッスンでは基本的なカウンセリングのアプローチ法としてどのような方法があるのか学んでいきましょう。

来談者中心的カウンセリング

来談者中心的カウンセリングはカール・ロジャーズによって開発されました。来談者中心的カウンセリングが開発されるまでのカウンセリングは、テストによる診断と指示を中心に行なう指示的カウンセリングが主流でした。しかし、ロジャーズは直接的指示命令ではクライアントの行動の変化は一時的なもので、真の問題解決には繋がらないと批判し、来談者の生来的適応・成長能力、来談者のもつ自己実現傾向を信頼することの重要性を強調しました
このように、カウンセリングを来談者主導のもと進めていくロジャーズの療法を来談者的カウンセリングと呼びます。この療法はカウンセラーが治すというよりも、むしろクライアントが自らもつ潜在的な力で治癒していく過程をカウンセラーがカウンセリングを通して援助していくものといえるでしょう。

ロジャーズは様々な問題は、経験と自己概念を通じて意識化されるものの不一致が原因であると考え、経験と自己を一致させること、自己一致が重要であるという結論を出しました。
自己一致とは経験したり、感じていることを否認、歪曲せずにそのまま受け入れ、自己概念の中に取り入れている状態のことです。問題解決の方向性として自己不一致の状態から自己一致の状態にいかに変容するかが重要です。カウンセラーにありのまま受容される体験を通して、自己概念の中に体験を統合すると、統合した自己概念を得ることができるとロジャーズは述べています。
来談者中心的カウンセリングでは、何よりもカウンセラーのクライアントに向かう態度・姿勢、そのありようが重視されています。カウンセラーに求められる態度条件として基本的に以下の3つがあげられます。

1.無条件の肯定的関心

カウンセラーはまずありのままクライアントを無条件に温かく受容し、誠実に接し、クライアントを心から尊重します。カウンセラーからありのままの自分を受容されることによってクライアントは自己に対する価値、自己への信頼感を取り戻し自分自身を次第に受容できるようになります。それにより自らを見つめなおすことが可能になるのです。カウンセラーに無条件に受容される体験を深めることにより、クライアントはカウンセラーに対する信頼を次第に形成していきます。

2.共感的理解

カウンセラーは相手の立場にたち、クライアントの気持ちや感情をあたかも自分自身のものであるかのように共感します。またクライアントがどのように外界や自分自身を認知しているか、クライアントの認知枠組みを理解しそこからクライアント理解を目指すのです。カウンセラーはクライアントのこうした感情や自分自身が意識できていない事柄をフィードバックすることにより、クライアントの自己理解を促し深め肯定的自己概念の形成をサポートします。

3.自己一致・純粋性

カウンセラーはクライアントとの関係において、カウンセラーもありのままの自分、本当の自分を大切にしてカウンセリングの中で相互に生き生きした人間関係を結ぶことが大切です。

こうしたカウンセラーの姿勢・態度は、その他の理論に基づくカウンセリングの技法が異なっても何よりもカウンセラーに求められる基本的な共通条件です。カウンセラーとクライアントの深い信頼関係なくしていかなるカウンセリングも成り立たないのです。
なお、カウンセリングについてより詳しくは「心理カウンセリングスペシャリスト」の講座で学ぶことができます。興味を持った方はチェックしてみるといいでしょう。