来談者中心療法によるキャリアカウンセリングでは、来談者独自のアイデンティティの明確化と、それに基づくキャリア目標の選択、自己実現の援助を基本的なカウンセリング目標とします。さらに、キャリアカウンセリングの基本原則として以下の4つをあげます。
- カウンセラーはカウンセリングにおいてクライアントの自己実現の過程を促進するような態度をとり具体的行動をとる。
- カウンセリングのスタート時においてはクライアントが抱えているキャリア上の問題点に焦点をあてる。
- クライアントのアイデンティティの明確化や、また必要に応じて職業・職務の選択を支援し意思決定を促すための心理検査や情報提供を行なう。
- 来談者中心療法のキャリアカウンセラーは、職業・職務を通してクライアントが自己実現するのに役立つカウンセリングスキルとキャリア情報を持つことが必要である。
このように来談者中心療法に基づくキャリアカウンセリングは、先ほど説明したカウンセラーの無条件の肯定的関心、共感的理解、自己一致と純粋性の3つの基本的態度に基づきます。クライアントをありのまま温かく受容し、傾聴し、クライアントの問題を整理し、クライアントの自己洞察、気づきを促し、ライフキャリア上の自己概念を明確化し、自己不一致の状態から自己一致の状態に導くことを主要な目標としているのです。
このように、話題はキャリアになっているものの基本的プロセスは通常のメンタルカウンセリングと変わりありません。キャリアカウンセリングをあえて心理的・情緒的問題を扱うメンタルカウンセリングと分けて考える必要はないでしょう。