行動主義的カウンセリング
行動主義的カウンセリングは、学習理論に基づき行動科学的なアプローチを行うカウンセリングです。学習理論では、人の行動はその行動を学習したことから形成されているとされています。環境要因や遭遇した出来事に刺激を受け、行動が起こり、強化されるという一連のプロセスが繰り返されるものなのです。
クライアントの心理的な状況を解きほぐし、心理の面から解決を図ろうとする来談者中心療法とは対照的に、クライアントの具体的行動に焦点を当てて現在うまくいっていない原因となっている行動自体へ働きかけて、問題行動を修正したり、症状を除去したり修正することによって不適応状態を改善しようとするのです。行動主義的カウンセリングでは、カウンセリングは1つの学習プロセスであるとしてカウンセリングの達成目標を明らかにし、目標達成できたか否かを明確に測定します。
行動主義的カウンセリング・行動療法アプローチは以下のような考えを元にしています。
- 不適応行動は学習によって形成されたもの。
- カウンセリングによる支援はクライアントの問題行動の具体的解決か症状の軽減。
- これまでに獲得された問題行動の消去、または新たな適応的行動の学習を行うかがカウンセリングの目標となる。
- カウンセリングにおけるクライアントの支援目標は客観的かつ具体的で測定可能なものでなければならない。
- クライアントを支援するための技法は行動科学的理論や臨床的事実に基づいている。
- カウンセリングによる支援の結果や効果は客観的で適性に評価できる。
行動主義的キャリアカウンセリング
行動主義的なカウンセリングでは、単独で技法を用いるよりも色々な組み合わせ技法を使用します。
1.問題行動の原因・その強化因子の分析、今後予測される結果などを明らかにする。
2.問題の原因となっている行動を明らかにする。
3.問題行動を継続させている強化因子は何かを明らかにする。
4.現在の問題行動を引き続き行なった場合、どのような結果になるかを予測する。
5.望ましい結果は何かを明らかにする。
6.目標を設定する。
7.行動計画を立てる。
8.学習理論に基づく色々な技法を用いて行動療法を実行する。
9.カウンセリング当初に設定した目標に達成したか否かを検討し数量的に評価する。
色々な行動療法の技法
クライアントに新しい行動を学習させたり、再学習させる援助を行うために用いる学習理論に基づく様々な具体的技法を学びましょう。
1.系統的脱感作
不安を起こさないように行動をスモールステップに分け、行動を練習しクライアントが不安を感じることがなくなるまで行なうことを示します。例えば、犬を怖がって身動きが取れなくなるクライアントに、まずは犬の置物に近づいて怖くないことを確認し、次は檻に入れた犬に近付いてみる…というようなプロセスを踏んでいくような行動を指します。
2.モデリング
望ましい行動を実際に観察させたり模倣させることによって、目標とする行動を獲得させることを示します。
3.セルフコントロール法
クライアント自身が自分の行動を管理・統制する方法、目標設定、実行、評価、報酬など一連のステップをカウンセリングを受けながら自己管理することを示します。
4.ガイドイメージ、イメージ療法
具体的な状況、場面での行動をクライアントにイメージさせ、イメージの中で成功体験を積ませ、構造化された積極的な思考を行うことによって行動に影響を与えることを示します。
このような行動主義に基づくキャリアカウンセリングにおいては、具体的な行動目標の設定、行動計画の実行、評価という一連のステップが重要になります。ビジネスやマーケティングの世界で言われる、いわゆるPDCAのようなものにも似ており、「具体的に何が変わったのか」というカウンセリングの効果を明らかにしようとします。行動療法は科学的で実用性に重きをおいたカウンセリング手法であると言えるでしょう。
行動科学的アプローチ法に関する代表的な理論家にクランボルツがいます。クランボルツは、行動主義的カウンセリングはクライアントが望む結果をもたらす行動を実際に学習することを支援する点に焦点を当てることが重要と述べています。
また、クライアントの心理学的分析を広範囲に行う必要はないとも述べています。つまり行動の学習による問題解決に重点を置くカウンセリングだと述べているのです。非常の有効な実践的方法であり効果も明確でわかりやすい点から、現在積極的にキャリアカウンセラーに活用されている技法です。