LESSON 4-5 ステップ3(フォーマル・アセスメント)

フォーマル・アセスメントとはクライアントのスキルや能力を予測し、クライアントの職業選択においてどこに焦点を合わせれば良いかを理解するサポートを行うためのものです。フォーマル・アセスメントのツールには多様な種類が開発されており、クライアントの自己理解を促すツールとして利用することができます。
フォーマル・アセスメントを大きく分類すると、性格興味や関心価値観基礎能力スキルコンピテンシーなどの測定要素があります。コンピテンシーは必要な能力を有している状態、人生にとって必要で便利な手段に満ちていることを意味します。キャリアの観点からの意味としては、職場や集団の要求する条件に対して必要充分な能力を有していることと定義されています。
アセスメントを行う場合には下記のような注意点があります。

  • アセスメントを選択する場合にはキャリアプランに必要な情報を正確に得られるアセスメントを選ばなければならない。
  • アセスメントはあくまで自己理解のための補助手段であり、クライアントの全てを正確に表しているわけではない。単にキャリアカウンセリングを効果的に行うための情報提供手段である。
  • アセスメントの結果とそこから得られる情報は、周囲の環境、個人的背景などを共に考慮にいれながら結果を解釈することが必要である。
  • アセスメントは一つだけに頼ることなく何種類かを同時に組み合わせ、様々な切り口からクライアントを理解し多面的にアセスメントすることができる。

フォーマル・アセスメントの種類

フォーマル・アセスメントは、キャリアカウンセリングにおいてキャリアの方向性を選択する際の意思決定、教育訓練プログラムの設定、選択する時などに活用します。一般的にキャリアカウンセリングにおいて用いられているフォーマル・アセスメントには下のようなものがあります。。

1.知能検査

個別式、集団式など、ビネー式知能検査ウェクスラー式知能検査という分類があります。学校における進学や進路などの参考に用いられています。

2.学力検査

学力を偏差値に換算して学力を全国水準と比較することができます。学校場面で進学や進路を選択、決定する場合に客観的能力を教師が把握することもできるテストです。

3.性格検査

Y-G性格検査(矢田部-ギルフォード性各検査)、MMPI(ミネソタ多面性性格検査)、ユングの向性テストなどがあります。キャリアカウンセリングで簡単に使用できるものとしてはY-G性格検査が一般的ですが、アメリカのキャリアカウンセリングで最も使用されているツールはMBTI(Myers Briggs Type Indicator)です。

4.適性検査、興味関心検査

適性を知りたい、客観的にどのようなキャリアの方向性が自分に相応しいか、などをカウンセラーに相談に来るクライアントは、将来の自分のライフキャリアの方向性に関する不安がある場合がほとんどです。
このようなクライアントに適性検査を行う場合は、何のために適性検査を行いたいのか、クライアントのニーズをよく理解上で判断する必要があります。適性とは、キャリア選択の決定や特定の活動を行う場合の潜在的な特性や能力などを指し、キャリアカウンセリングでは適性検査は大切なアセスメントです。適性検査の診断処理にコンピュータが導入されてから手軽にアセスメントできるようになりました。主な適性検査としては以下のようなアセスメントがあります。

4-1.適職診断検査(CPS-J Career Planning Survey-Japanese Version)

ホランドの理論に基づきアメリカで開発されたテストです。職業興味と能力に関する自己評価の側面から適性を診断するものであり、カウンセリングに必要な情報を収集することができます。自分のキャリアの今後の方向性やセカンドキャリアを考える場合などに活用されるツールです。

4-2.一般職業適性検査(GATB General Aptitude Test Battery)

この適性検査は9種類の適性能力を測定するために16種類の下位検査を行い、その組み合わせで診断する方法をとっています。測定される適性能力は、知的能力、言語能力、数的能力、書記的知覚、空間判断力、形態知覚、運動共応、指先の器用さ、手腕の器用さの9種類です。一般職業適性検査は企業などにおいて、社員の希望や適性能力などを考慮し、職種別の配置や配属先を決定するときの参考情報の1つとして活用されています。

4-3.職業興味検査(VPI Vocational Preference Inventory)

ホランド理論に基づき日本の雇用問題研究会が作成した検査です。この検査は興味領域尺度と傾向尺度から構成されています。クライアントに160種類の職業を示し、それらに対する興味や関心があるかどうかを答えます。その上で6種類の職業興味領域に対する興味や関心の強さを測り、5つの傾向尺度のどこに属するかを診断するものです。学生の就職準備や、転職に関するキャリアカウンセリングのアセスメントとして用いられています。

興味領域
  • 現実的興味領域(R尺度)…機械や物を対象とする具体的で実際的な職業領域(建築士、測量士、大工など)
  • 研究的興味領域(I尺度)…研究や調査などの探索的な職業領域(研究者、医師、薬剤師など)
  • 芸術的興味領域(A尺度)…音楽、美術、文芸などを対象とする職業領域(演出家、俳優、通訳、指揮者、イラストレーターなど)
  • 社会的興味領域(S尺度)…人に接したり、奉仕したりする職業領域(ケースワーカー、カウンセラー、警察官、保育士、美容師など)
  • 企業的興味領域(E尺度)…企画や組織運営、経営などの職業領域(銀行支店長、営業課長、人事課長、弁護士など)
  • 慣習的興味領域(C尺度)…定まった方式や規則に従って行動するような職業領域(事務員、プログラマー、テラー、秘書など)
傾向尺度
  • Co(自己統制傾向)…自分の衝動的な行動や考えをどの程度統制しているか(高いほど統制出来ている)
  • Mf(男性ー女性傾向)…男女問わず、一般に男性が好むような職業にどの程度関心を持っているか(高いほど男性が好むような仕事に関心あり)
  • St(地位志向傾向)…社会的威信や名声、地位や権力などに対して、どの程度強い関心を持っているか(高いほど地位や権力に関心あり)
  • Inf(希有反応傾向)…職業に対する見方がどの程度、常識とらわれずユニークであるか(高いほど常識にとらわれていない)
  • Ac(黙従反応傾向)…どのくらい多くの職業を好んだか(高いほど多くの職業に幅広い興味を持っている)