LESSON 5-1 面接のテクニック①

ここでは、面接における具体的なテクニックを学習していきましょう。
面接はカウンセラーとキャリア上の問題や具体的な目標を持つクライアントとの相互コミュニケーションの場です。そのため、上手にコミュニケーションをとるための技術が大切になってきます。
どの理論に基づくかによって面接の内容に違いはあっても、カウンセラーのクライアントに対する姿勢や態度、聴き方、整理の仕方、質問の仕方などの面接技法は根本的に共通しています。

座り方

机を挟んで斜め正面、または互いに90度の位置関係になるように座ります。真正面よりはやや斜めの方がプレッシャーがかかりません。一般的に、真正面の座り方は交渉の場など心理的に戦いの場へ出るように感じやすい座り方になるため、避ける必要があります。
90度の角度は直接対面しない分心理的負担は少なくなりますが、カウンセラーがメモをとる場合にクライアントの目に入りやすいというデメリットもあります。

姿勢

ゆったりと椅子にあまり深く腰をかけず、クライアントの方にやや身を乗り出すような姿勢で積極的な関心を表現しましょう。ボディランゲージは非常に重要です。脚や腕を組んだりしながら聴くと、どれだけ言葉で傾聴の姿勢を示しても威圧感を与えてしまい信頼関係の構築に支障をきたす場合があります。
ボディランゲージは様々なメッセージを伝えていることをカウンセラーは忘れてはなりません。クライアントの話し方、表情、目つき、態度、姿勢などには多くの心理的メッセージが含まれているのと同様、自分自身もメッセージを発してしまうことをよく認識した上で、信頼関係の構築を行いやすいように姿勢をコントロールしましょう。

視線を向ける

クライアントが話している時は、温かく相手を受け入れるような雰囲気で相手に視線を向け、表情を観察しながら話を聴きましょう。目線を通じてクライアントに関心を持っていますよ、というサインを送ることが大切です。柔和で温かく豊かな表情を心がけましょう。視線を意識するとメモをとるのが難しい場合もありますが、できるだけ書類ばかり見ないようにし、クライアント退出後に素早く記録しまとめるように努めましょう。

頷く、相槌を打つ

クライアントの話を聴きながら、頷いたり適度の相槌を打ちながら聴きましょう。真剣に積極的に話を聴いていますというサインを送ることが大切です。

共感する、共感的な言葉を返す

クライアントの話の内容に合わせて、気持ちや感情に合わせて共感し、共感的な表情や態度、言葉で応答しましょう。自分の考えでは受け入れられない考え方を話したとしても、すぐに否定したり批判してはいけません。共感的な応答をするためには、受容することが大切です。クライアントの立場にたって考え、感じ、どのように問題を捉えているのかを理解することで、心から共感できるようにすることが必要です。

支持する

クライアントの話を聴きながら、必要に応じて賛同したり、認めたり、支持をしましょう。このような支持的フィードバックや励ましをカウンセラーから与えられることによって、クライアントは肯定的な自己概念を形成することができるようになります。クライアントは前向きに問題を捉えたり、解決しようとする姿勢に変わっていきます。

話の要点を繰り返す、反射する

クライアントの話の要点を所々で繰り返しましょう。クライアントがカウンセラーに最も分かって欲しいと思われる点、内容、気持ちをまとめて簡潔的に繰り返します。クライアントはカウンセラーが要点を繰り返すことにより、これが正しく自分の話をわかってもらえたと安心感を持ちます。さらに真剣に聴き、正しく自分を理解してくれる体験を通してカウンセラーに対して信頼感が芽生える非常に効果的なテクニックです。
また、クライアントはカウンセラーから要点を聞かされることで、あたかも鏡の中の自分に言われているように自分の置かれた状況、問題、目標などを客観的に見ること、確認することができ、自己理解を深めることに役立ちます。
人は年齢が上になる、経験が増える、役職が上になるにしたがって聴くスピードのほうが、話すスピードよりも3倍から4倍速くなりがちです。そのため、相手の話をよく聴かないで勝手に判断し、決め付け、先走り、途中から口を挟み相手の話の腰を折る傾向があります。このような行為はカウンセラーへの信頼を失墜させ、クライアントが心を開かなくなる原因になります。
繰り返し、フィードバックしようと意識することで、真剣に積極的に集中して話を聴かざるを得ず、聴き手が勝手に先走ることを抑制する効果も期待できます。