特性因子理論
特性因子理論は、「人と仕事のマッチング理論」とも呼ばれる、1909年にフランク・パーソンズが発表した理論です。特性は興味、適性、価値観、性格を意味し、因子は仕事内容、必要能力を意味しています。人にはそれぞれ特性・能力があり、その能力にぴったりあった職業に就くことが個人にとって良い選択である、という考え方です。
現在でも、「得意を生かそう」「自分にあった仕事」などという文脈で職業選択が語られるように、キャリアへの考え方に強い影響を与えています。
特性因子理論は以下の仮説に基づいています。
- 一人ひとり個人は必ず他の人とは異なる能力または特性をもっており、この能力・特性は測定可能である。
- 人は自分の能力・特性と職業に求められるスキルが一致すればするほど、個人の仕事における満足度は高くなる。
- 人は自分の能力・特性に最も相応しい職業を選択する。
この仮説に基づきパーソンズは以下のような3つのキャリアカウンセリングモデルを提唱しました。
1.自己分析
性格・適性・興味・関心・希望などに関する自己を理解促すことを示します。
2.職業分析
仕事の内容・求められる能力などの分析と情報提供することを示します。
3.理論的推理
合理的推論による人と仕事のマッチングを行うことを示します。
特性因子理論のカウンセリングの進め方
特性因子理論を活用する場合、具体的には以下のような流れに沿うのが一般的です。
1.分析
各種の心理検査を行って、クライアントの問題点を整理することを示します。
2.統合
職業、労働情報を収集し統合することを示します。
3.診断
問題点を並べ優先順位をつけることを示します。
4.予測
将来の見通し、行動予想を行うことを示します。
5.処置
カウンセリングを行い、助言・指導を行うことを示します。
6.観察
クライアントのフォローアップを行いその後の経過を見ることを示します。
当時のアメリカは効率的人材活用法の研究が盛んで、特性因子測定法として個人特性を診断する質問紙法、適性検査、性格検査、興味検査、能力検査などの測定法が開発されました。この検査結果を基に人と職業を結びつけ効率的に配置していました。新しいカウンセリング法が出てくるまでキャリアカウンセリングの主体であり、現在でも実際的有効性は高く評価されているのがこの特性因子理論です。
しかし、問題点や批判も存在します。指示的であることやカウンセラー中心で、カウンセラーの技術に重点が置かれてしまうこと、来談者の感情やカウンセラーとの相互協力が軽視されてしまうこと、テスト・検査依存型であったり、適性を固定的に見る傾向があることなどです。
歴史のところでも見たように、特性因子理論は指示的療法と呼ばれていて、それに対して来談者中心的カウンセリングを行うカール・ロジャーズ(Rogers, C)のカウンセリングは非指示的療法と呼ばれています。