現在私達を取り囲む社会環境は、非常に速いスピード日々変化しています。経済環境、社会構造の環境の劇的な変化が引き起こす働く人々へのストレスは大きく、過重なストレスが間接的、直接的にかかることによって職場不適応を起こしたり、生産性が低下し経済活動が萎縮してしまう原因となります。
ストレスも過剰となると、次第に心身の健康を損なうケースや自殺に追い込まれるケースも増えていて、中高年ビジネスマンの自殺率の高さは社会全体問題となっています。
特に日本では、仕事・働く、ということは個人のアイデンティティーの中心となることも多く、仕事でのストレス・不適応の悩みがそのまま自己の存在の否定につながると感じる人も多い文化を有していると言えるでしょう。
そのため、キャリアを失った時、失いそうになった時人々の心理状態は非常に苦しく、不安障害や抑鬱状態に陥ったり、不眠、身体の不調を訴えるなどといった現象が発生します。
このような背景の中、キャリアカウンセラーのもとへ相談に訪れるクライアントの中にはキャリアの問題だけではなく、心理状態が不安定で心身の健康問題を抱えた人が多く見られます。キャリアカウンセラーはクライアントのこうした状態をカウンセリングの導入段階、初期段階で理解し、見極め、適切な対応ができなければならなりません。クライアントのメンタル問題も含めて、トータルにクライアントを理解しケアすることなしには、効果的キャリアカウンセリングは行われないのです。
しかし、キャリア問題よりもメンタルな問題が主症状として深刻な場合は、キャリアカウンセラーの能力、守備範囲を超えるものに関しては、メンタルカウンセリングの専門家や精神科の医師を紹介し、先に治療を受けることを勧めるべきでしょう。自分を頼ってくれたからといって、専門外のことに手だしをするのはプロとして失格です。専門外のことまで責任を負おうとすることは、本当は心臓の病で手術が必要なのに、「自分は医者ですから、私がなんとかしましょう」と小児科医がその患者を引き受けるようなものです。
どこまでが自身の対応の範囲かを適切に見極めるためにも、キャリアカウンセラーも最低限の精神医学知識、臨床心理学の知識を持つことが求められます。