LESSON 2-3 自己概念

スーパーの理論では、差異的心理学発達心理学社会的心理学現象学的心理学の4種類の心理学を背景としています。キャリアは複雑で1種類の心理学でキャリアの理論を構成することは不可能だと考え、統合的な理論を考えました。これもスーパーの理論が包括的であると考えられるひとつの理由です。
 

自己概念

スーパーの理論の重要な考え方として、「自己概念」が挙げられます。
自己概念とは自己像とも言われ、「自分は何者か」「自分はどのような人でありたいのか」など、自己啓発の世界で言われる「セルフイメージ」のことです。
自己概念は「主観的自己」「客観的自己」の両方により形成されていきます。主観的自己は個人が主観的に形成してきた自己についての概念を表し、客観的自己は他者からの客観的なフィード・バックに基づき自己によって形成された自己を表します。
 
自己概念のうち、職業に関連するものを「職業的自己概念」と呼びます。
職業的自己概念には、

  • 自分はどんな仕事をしたいのか
  • 自分はどんな仕事ができるのか
  • 自分は仕事において何を大事にしたいのか

といったものが挙げられます。
自己概念には肯定的な自己概念と否定的な自己概念が存在します。肯定的なものは、「自分は頭がいい」「自分は頑張れる人だ」といったもので、否定的なものは「自分は何をやってもうまくできない」「自分はどうでもいい存在だ」といったようなものが挙げられます。
肯定的自己概念はエネルギーとなり人にいい影響を及ぼしますが、否定的自己概念はその人の意欲を削ぎ、行動力を鈍らせます。
職業選択においても、この職業的自己概念が低いと、わざわざ自分がうまくできない職業を選んだり、自分に見合わない職業の選び方することが多くなります。
このため、カウンセラーはクライアント(相談者)の自己概念に注意を払う必要があるということです。自己概念は幼少期から現在に至るまでの家庭・学校・友人関係など様々な経験、文化によって形成されていくため、丁寧なヒアリング・洞察が必要になります。
 

自己概念の変化

自己概念は1つではないし、決まった時期に形成されるものというわけでもありません。自己と他者、自己と環境との相互作用の中で修正・調整されると考えられています。
様々なパーソナリティ検査や能力検査など活用することで、個人が持つ職業的自己概念についての客観的な情報を知ることができます。
その時点でクライアントがどのように自己を捉らえているかというのが「主観的自己」ですが、カウンセラーがフィードバックを与えることで「客観的自己」に影響を与えることになります。
もちろん具体的な職業そのもののフィードバックも通じて絶えず変化していくということになります。
キャリア・カウンセリングを行う際はこの自己概念は今この瞬間も変化しているということを念頭に置いて接することが大切です。