LESSON 2-4 ライフ・スパン/ライフ・ロール

スーパーはキャリア発達に役割時間の考え方を取り込みました。それに影響を与える決定要因とその相互作用を含む包括的概念として提唱したのが、ライフ・スパン/ライフ・ロールの理論的アプローチです。
キャリア発達を時間の視点から捉えたものがライフ・スパン役割の視点から捉えたものがライフ・スペース(ライフ・ロール)です。ライフ・スパンとライフ・ロールという2つの軸を持った絵はライフ・キャリア・レインボーと呼ばれています。
 

ライフ・スパンの理論的アプローチ

ライフ・キャリア・レインボーの時間軸であるライフ・スパンは人生の発達段階を描写して、仕事とその環境や状況に適応するライフコースに焦点を当てています。人生構造は一度構築されても固定的なものではありません。発達的なコースを進みつつ、時には再構築を必要とします。つまり、予想できるコースで就職したが、時には予想と違った場合には転職が必要になる、というようなことです。
一生涯を通じて行われる選択や変化を予想可能なものとして説明するために、スーパーはライフ・スパンという発達視点を盛り込みました。
個人のキャリアは心理・社会的成熟や環境適応についての課題を達成するにともない発達していきます。
生涯を通じた一連のライフ・ステージをマキシ・サイクルと呼びます。マキシ・サイクルは5段階で形成されていて、0~14歳を成長段階、15~24歳を探索段階、25~44歳を確立段階、45~64歳を維持段階、65歳以上を解放段階としています。

成長段階の発達課題

  • どのような人なのかについての考えを発達させる。
  • 仕事世界への志向性や働く意味の理解を発達させる。

探索段階の発達段階

  • 職業的好みが具現化される。
  • 職業的好みが特化される。
  • 職業的好みを実行に移す。
  • 現実的な自己概念を発達、より多くの機会について一層学ぶ。

確立段階の発達課題

  • 希望する仕事をする機会を見つける。
  • 他者との関わり方を学ぶ地固めと向上。
  • 職業的地位の安定を築く。
  • 永続的な地位に落ち着く。

維持段階の発達段階

  • 自らの限界を受容する。
  • 働き続ける上での新たな問題を明らかにする。
  • 本質的な行動に焦点を当てる。
  • 獲得した地位や利益を保持する。

解放段階の発達段階

  • 職業外の役割を開発する。
  • よい退職地点を見出す。
  • 常々やりたいと思っていたことをやる。
  • 労働時間を減らす。

 

ライフ・ロールの理論的アプローチ

ライフ・キャリア・レインボーの役割軸であるライフ・ロールは仕事に関するもの限定ではなく、個人の人生における役割全体を描写しています。スーパーはキャリアを単なる職業だけでなく個人の経験する多様な役割とその取り組み方によって構成されると考えています。多くの人が一生涯を通じて経験する共通的な役割として、子供学生余暇を過ごす者市民や国民労働者家庭人その他の7つの役割をあげています。
個人がこれらの役割をいつ、どのような形で、どの程度の比重で果たすのかは個人的な要因だけでなく社会の要請や文化などに影響されますが、最終的には個人が決定することです。役割を演じられる空間をアリーナと呼びます。最も一般的なアリーナは家庭、学校、地域社会、働く場の4つで、これらを舞台にしてその人ならではの人生、つまりキャリアを構成しているのです。
スーパーのライフ・ロールの考え方は、仕事以外に人生全般での役割を重視しようとする考え方です。仕事での役割は重要な役割ですが、個人が占める多くの役割の一つでしかありません。
 

満足度と適応

仕事から得られる満足度は、たいていは職業的自己概念をどの程度達成できたかによります。
肯定的自己概念を持っている人は、その自己概念を認められるようなことを職業生活で実現できたときに、満足できるということです。否定的自己概念を持ったままだと、ある種否定的イメージを実現している状態が自己概念に「適応」している状態ですが、当然その状態は満足度が低いはずです。
「自分は仕事ができない人間だ…」と思っている人が失業した状態のままでいることは、適切だとは言えないでしょう。そのため、フィードバックを通じて自己概念が満足できるものに変化していくほうが望ましいと言えますが、前述したように仕事は自己概念の全てではありません。
仕事や職業が存在しなかったり、あまり重要視しておらず、余暇や家庭といったほかの焦点が中心となる人もいます。そのため、前で説明したライフ・ロールの観点から、総合的な自己概念に対しどの程度適応できているかを考えることが大切です。
これらの点からも、キャリアは成熟するというよりは、いかに自己の適切なイメージにあったことを実現できるか、対応できるかということになります。キャリアに対する適応力を高める(キャリア・アダプタビリティ)が成長の証であるというように考えられます。
 

まとめ

職業的自己概念、ライフ・スパン/ライフ・ロールの理論的アプローチは、それ自体でキャリア選択の際の指標となってくれる貴重な考え方です。
ですが一方それらの各理論間の整合性や理論的統一性は少なく、単なる理論の寄せ集めだとする批判もあります。
カウンセリングの目的を踏まえ、クライアントにとって何がいいかを考えながらここで学んだキーワードを参考に、判断指標を提示しながらサポートしていくことが大切です。