LESSON 2-10 計画された偶発性

前ページで説明したように、人は様々な情報から日々学習し変化していっています。
それをキャリア選択に生かすためにはどのようにすればいいのでしょうか。

社会的学習理論に基づくカウンセリング

カウンセラーとして学習理論を生かしてカウンセリングを行う場合、以下のような手法が考えられます。

  • フィードバックを与えて強化する
  • ロールモデルを演じる、シミュレーションを行う

直接経験による学習で見たように、人はプラスのフィードバックを与えることで行動を強化します。したがって、カウンセリングを通じてプラス・マイナスのフィードバックを与えることによって、その人の経験が強化され、ひいては意思決定に影響を与えることができます。
また、カウンセラーとともに特定のキャリアのロールモデルを演じてみたり、シミュレーションを行うことによってより具体的なイメージがわき、そのシミュレーションの過程で経験を積み学習を行うことで、より適切なスキルや考えを身につけていくことができると考えられます。

計画された偶発性

上記のようなカウンセリング手法は、理論的ではあるもののいまいちピンとこない方も多いでしょう。学習をシミュレーションする行為が多分に操作的である割には、その学習があくまでシミュレーションであり、リアルなフィードバックがないため学習としての効果が弱いと予想されます。
そこで、クランボルツはキャリア形成のひとつの重要な要因として計画された偶発性の概念を提唱しています。偶然におきる予期せぬ出来事からも自分のキャリアは形成され開発されるものであり、むしろその予期せぬ出来事を大いに活用すること、偶然を必然化することを勧めているということです。
これはただ「何か変化が起きないかなあ」「いいことないかな」と待っているという姿勢ではありません。計画された偶発性、の文字通り、そういった予想外の出来事を自ら掴みに行く、出会いにいくという姿勢の中で出てきた偶然の出来事に飛び込んで、そこから学習をしていきましょう、というアプローチです。

従来のキャリアカウンセリングでは、未決定を減らすことと個人の特性と職業の特徴間の一致を増やすことの2つを目指していました。しかしクランボルツは変化の絶えない現代ではこの方法は適切ではないと考えています。
ぴったりの職業、キャリアが決まらない状態、すなわち未決定の状態は従来のマッチング理論においては望ましくないものでしたが、学習理論においては未決定であることにより新しい学習が促進されることがあるため望ましいものと考えられます。個人の特性と職業の特徴間の一致は重視しすぎると、同じ職業内においても、様々な特性を持つ人が成功していること・職業自体が変化し続ける事実を無視しがちです。
インターネットの発達などに伴い時代の変化が早くなっていると言われる現代に非常にマッチした考え方と言えるのではないでしょうか。